対話の効果

今回は、私のあるクライアントの身近な事例を紹介します。


彼の勤める会社は、業界全体の不振と自社の業績悪化も重なり、

ここ数年で合併、吸収を繰り返していました。

その結果、会社の中には、複数の企業文化、風土が存在し、

日常業務に支障が出るのはもちろん、組織がまともに機能していませんでした。


そんな中、彼はマネジャーとして、複数の文脈を持つ上司(役員)、

部下との板挟みに合い、一向に改善しない組織に限界を感じて、

退職を考えるようになりました。


最大の悩みは、合併、吸収後の組織で複数の部署を兼務することになり、

文化の違う上司と部下がいっぺんに増えたことが大きかったようです。


そこで最初に彼に確認したのが、

「新しい上司、部下たちと話す時間をもったかどうか」です。


案の定、そんな余裕はない、話していないとの回答。

複数の企業文化を持った者同士が混在する中、

誰もリードする人がいなかったのです。


すなわち、お互いのことをまったく知らない状態で組織が動いてたため、

リスクが増大し、問題が顕在化しているにも関わらず、

部署間でお見合い状態だったのです。


そのため、状況改善と彼自身のチャレンジのために、

まず最初に組織ごとに一同に会して話す時間を作るようにおすすめしました。


「何を話せばよいかわからない」とのことなので、

ワールド・カフェ的な自己紹介の場を提案。

ワールド・カフェのプロセスをもとに1時間程度でできる場の設計と

手順をメモしたごく簡単なものを渡しました。


2週間後、彼は退職も念頭に置き、失うものはないと、

実際に対話や社内研修などに慣れていない20名程度の組織で

開催にこぎつけました。


問いは、「あなたの職場(部署)で気になることは何?」

「私たちの会社(全体)で気になることは何?」

(※少し言い回しを変えています)


その結果、何が起こったかというと、終了後、ほとんどの人が笑顔になり、

今までが嘘だったように話し始めたとのことです。

それが何よりも嬉しかったそうです。


彼曰く、ここ数年、組織が変わっていく中で、

それまで一緒に働いている同僚たちの、お互いの笑顔を

ほとんど見た記憶がなかったそうです。


実際には見ているかもしれませんが、それだけ組織の雰囲気は悪かったのでしょう。

経営陣の一人も全社的に推進しようと乗り気になり、

微かな希望が見えてきました。


話をするという行為は、自分の内側から言葉を通して意図を発信することです。

その発信する内容の質的深度は人それぞれで、職場の環境、人間関係、

会社での本気度など、いくつかの要因で変わってきます。


日常の、企業論理がまかり通る中で、人的要素は多くの場合後回しにされます。

私自身、社内外の組織変革や改善プロジェクトに関わってきましたが、

目前の結果ばかり気にして、短期的見通ししかしないコンサルタントも

たくさん見てきました。


実際に、中長期で質的変容を導くプランを実行するには、

辛抱強く経営陣と現場との折衝をこなさなければなりません。

それには経験以上に、覚悟が必要です。


しかし、結局は、現場の人間が運用し、当事者たちが重い腰を上げて

組織を改善することに取り組まなければ、外部のコンサルタントが

一時的に成果を出す指南をしたとしても、遅かれ早かれ壁にぶつかります。


彼の見出した答えは、「やっぱり楽しく仕事をしたい」です。

「いつも笑顔のある職場にならないかな、、、」とまだまだ疑心暗鬼ですが、

一旦前に進む選択をしたようです。

自らのシンプルな思いに気づいたからです。


それまで彼をはじめとした会社の同僚たちは、自分の内側に意識を向けて、

その感情や思いを扱うことをしてきませんでした。

職場で対話を推進すれば、仕事を推し進めるだけではなく、

彼のように自分の思いに気づき、確認することで、

内側からエンパワーメントすることも可能です。


対話の手法は、万能ではありませんが、このケースのように

使い方、デザイン次第で様々な効果を生みだすことが可能です。

そして、彼のように、同僚や組織を変えようとするのではなく、

自分自身が気づき、変わることで、個人と組織が変わる大きなきっかけをもたらします。


みなさんも当たり前の関係になっている上司や部下と

テーマを決めて対話してみてはいかがでしょうか?


(DODパートナー:坂本敬行)

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